今回はアナログレコードのことから少し離れてお話をしてみようと思います。
先日「CD の取り扱いをやめる店舗」のニュースが各媒体で話題になっていました。
そのニュースの記事に一通り目を通しましたが、販売をやめる、買取りをやめる、あるいはその両方をやめる、といった店舗がここへきて俄かに急増しているようです。
少し前になりますが、2021 年3 月には紀伊國屋書店新宿本店が売場改装のために同年4 月でCD の取り扱いを完全に終了しています。
これらの事象を踏まえると CD の取り扱いをやめる店舗は今後も増える傾向にあると言えるのでしょう。もはやCDは「過去」のものになりつつあるのかもしれません。
CD が売れない時代になっているという認識は販売する側も購入する側も少し前から共有していたのではないかと思われますが、実際にそうした流れを目の当たりにすると少しもの寂しい気持ちになります。
CD が売れなくなったことの要因としてサブスクリプション (以下サブスクと略記)が世間に広く浸透していったことと関連していることは、ほぼ間違いありません。私自身必ずしもサブスクに対して批判的な立場をとってはいませんが、経験上サブスクにはならない音楽がたくさんあることを知っているのでCD の全面的な取り扱い中止には些か懐疑的になってしまいます。もちろんCD の物理的な寿命についての問題はあります。
デジタル信号によって記録されたデータが理論上劣化することはありえませんが、それを保存する光ディスクは物質であり、経年劣化によって寿命を迎えることは避けられません。そのことをつい忘れがちになってしまうのですが、とはいえ それを理由にCD がなくなってしまっても構わないというのは些か乱暴でまた早計に失した考えではないかと思われます。
程度の差はあるとはいえ、人はこれまで脆くて儚い物質に魅せられてきたのではないでしょうか。
昨今CD化やアナログ化といった、いわゆるフィジカル化に主眼を置かずに活躍している音楽家、アーティストが増えてきています。フィジカル化にかかるコストのことを考えれば当然の趨勢だと言えます。配信やYOUTUBE などで十分活躍できるということは、それはそれで喜ばしいことですし、またそうした情況を享受するのも当然であると考えています。
しかし、「過去」へのまなざしを欠いた享楽主義が差招くのは、必ず悲惨な世界であることを忘れてはなりません。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、そういう意味でもCD の取り扱いをやめる昨今の風潮には素直に首肯できないところがあります。