数年前になりますが、友人の紹介で海外在住のレコードのバイヤーの方とゆっくりお話をする機会を得られました。
雑談の話柄が海外から注目を浴びはじめていた“和モノのシティ・ポップ”に移りましたが、その方は「今は“和ニューウェイブ”のレコードを集めている最中」と少々素っ気ない調子で仰いました。こちらがすかさず理由を訊ねると、「シティ・ポップの次のブームになるから」とこれまたごくあっさりと答えられました。
個人的には“和ニューウェイブ”が次のブームになるという予想を聞いて少し首を傾げるところがありました。
それというのもその時分には既に“和ニューウェイブ”に該当するアーティストは国内外を問わず人気があり、再評価も進んでる印象を持っていたからです。
ですからその方の真意を今一推し量ることができませんでした。ところが、そのあとちょっと間をおいてから、国内アーティストによるニューウェイブのコンピレーションCDが発売され、その商品の惹句に“次なるブームはコレ!”という文言を見つけました。
さらにそれからほどなく「RECORD STORE DAY」でコシミハルの『パラレリズム』の再発が発売されるというニュースを知りました。(ちなみにこのアルバムは“和ニューウェイブ”というより“テクノポップ”といったほうが耳馴染みがよいのかもしれません。本作は細野晴臣と高橋幸宏が設立したYENレーベル期の名盤として知られています。本作のプロデュースは細野晴臣が担当しています)
そこでバイヤーの方が言っていたようにシティ・ポップの流行にも少し翳りが差すのかと思ったのですが、どうやらそれは誤りだったようです。案に相違して、“和シティ・ポップ”に特化したアナログイベント「CITY POP on VINYL」などが始まりました(同イベントは2022年8月にも開催)。まだまだシティ・ポップが国内外を問わず、また世代を問わず熱い支持を受けているのを改めて認識させられました。
では、“和ニューウェイブ”の流行はどうなったのか。
個人的には前段で記したとおり、数年前から“和ニューウェイブ”なるものは人気と安定した需要を持っており、ただそれが昨今のシティ・ポップ人気の大流行の陰に隠れて表立っていないだけであって、“和シティ・ポップ”と一緒に十分受け入れられていると思っています。“和シティ・ポップ”や“和ニューウェイブ”はともに曖昧なサブジャンルに過ぎませんが、“和シティ・ポップ”に興味を持てば自然と“和ニューウェイブ”に行き着くのではないかと思っています。
むしろそうならないのが不自然なのではないでしょうか。
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