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アナログレコード雑感

2022年5月31日

現在、非常に多くの人が音楽配信サービスなどを利用して音楽を聴いていると思われますが、とはいえ決して音楽の聴き方がデジタル配信だけに集中しているわけではなく、多くの人は種々様々な音楽記録媒体を併用する形で音楽に触れているように思われます。

しかし今後も音楽データをダウンロードして音楽を聴くという形が主流であり続けるでしょう。

こうした配信サービスが普及したおかげで、またその余波のようなもののおかげで、これまで聴くことの困難だった音楽も様々な形で簡単に聴けるようになりました。

私としてもそのことは素直に喜んで受け入れていますし、一部の人しか聴くことのできなかった音楽が広く知られたことによって、CD化やアナログ化を後押しするきっかけにもなったのではないかと思っています。

それは個人的な喜びを超えて多くの音楽ファンを喜ばせつつ、音楽自体を豊かにさせる要因の一つになったとも思っています。

それで私自身はというと、自分の気に入った音楽であればデジタル音源だけでは満足できないので、まずアナログレコードで購入できるかどうかを調べてしまいます。アナログ化されていないものや、あまりに高値で取引されているのものには手が出せませんが、そうでない限りはアナログレコードを購入して聴くようにしています。

その理由はあまりに単純で言うのも恥ずかしいのですが、アナログレコードの「モノ」としての魅力に抗えないからなのと、アナログレコードの音が好きだからです。断っておきますが、CDが登場する前の60年代や70年代の音楽はアナログレコードで聴く方がオリジナルの音に近い、などとは思っていません。音や音の響きを前にして、人の聴覚など大してあてにはならないのではないか、というのが個人的な考えです。それについて個人的な体験を少しお話ししたいと思います。
私がピアニストのドン・フリードマンのファーストアルバム『ア・デイ・イン・ザ・シティ』(1961)をはじめて聴いた時、少しこもったようなピアノの音色の響きに抽象的な美を見出して甚く魅せられたのを覚えています。このアルバムは、ニューヨーク市に設立されたジャズレコードレーベル「Riverside Records」から発売されました。私はこのアルバムを国内盤のアナログレコードで聴いたのですが何度も聴くうちにUSオリジナル盤のもので堪能したいと思うようになりました。USオリジナル盤なら国内盤よりくっきりとした音で聴けると思ったのです。
ところが、ふと国内盤に付属しているライナーを読んでみると、アメリカ本国に於いてこのアルバムのマスターテープが不明である旨が記されてありました。
これには大変驚かされました。
ドン・フリードマンともあろう才能の持ち主の貴重なマスターテープの所在が不明であることにも驚きましたが、それよりも私の感じたこのアルバムの魅力が実はアーティスト側からすれば大変不本意な形で発売されたものだったことを知って呆然とさせられました。
オリジナルマスターテープが紛失していたからこそ『ア・デイ・イン・ザ・シティ』の「魅力」に触れられたのかもしれない、と思えなくもないのですがとても複雑な心境になったのを覚えています。

ちなみにドン・フリードマンのセカンドアルバム『サークル・ワルツ』(1962)は、管見の限りではマスターテープが紛失するという事態は避けられたようです。このアルバムはジャズ史でも傑作として知られていますので、ぜひ聴いてみてください。

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